わたしの名前はカクダエミコ。宮城から東京に出てきて10年以上経つ。東京に来たのは雑誌の編集者になりたかったから。そう言うとみんな笑った。「絶対なれるわけない」とみんなが言った。 でもその10年後、私はライター、編集者として働いていた。日本中・世界中を駆け回って、みんなが憧れるファッション雑誌で名前を冠した連載をし、ファッションページを編集した。本を3冊出した。「カクダさんですよね、知ってます」と声をかけられることもあった。 でも、何の感慨もなかった。仙台にいた頃、あんなに憧れていた職業について、フリーランスでたくさんの大きな会社と同時並行で仕事をして、あの頃からしたら夢物語みたいな生活を送っているのに、何の喜びも感じられなかった。ただ日々の忙しさに追われて土日も平日も休みはなくて、どこで誰といる時も次の仕事のことを考えていた。
クラブハウスの恋人 1
クラブハウスの恋人 1
クラブハウスの恋人 1
わたしの名前はカクダエミコ。宮城から東京に出てきて10年以上経つ。東京に来たのは雑誌の編集者になりたかったから。そう言うとみんな笑った。「絶対なれるわけない」とみんなが言った。 でもその10年後、私はライター、編集者として働いていた。日本中・世界中を駆け回って、みんなが憧れるファッション雑誌で名前を冠した連載をし、ファッションページを編集した。本を3冊出した。「カクダさんですよね、知ってます」と声をかけられることもあった。 でも、何の感慨もなかった。仙台にいた頃、あんなに憧れていた職業について、フリーランスでたくさんの大きな会社と同時並行で仕事をして、あの頃からしたら夢物語みたいな生活を送っているのに、何の喜びも感じられなかった。ただ日々の忙しさに追われて土日も平日も休みはなくて、どこで誰といる時も次の仕事のことを考えていた。