夢の話1
週末は目が溶けるほど寝た。寝ても寝ても眠かった。部屋の外で起こっている現実には全く興味が持てなかった。どこで誰が何をしていようが、何が起こっていようが、3回ぐらい瞬きをしたらどうせすべて消える。ベッドから起き上がって、わざわざそれを見に行ったとして、次々に「見なければならない」刺激がたくさん起こり、結局なにもかも忘れてしまう。
眠っている間、ずっと夢を見ていた。夢にはいろいろな人が出てきた。離れて暮らしているからなかなか会えない人、昔は頻繁に会っていたけど最近「忙しい」から会っていない人、家族、友人、いろいろ。
夢に出てくる人との距離はフラットだ。「この人最近会ってないな」とは思わず、心はその人と頻繁に会っていた時の状態にある。幼い頃の兄弟が出てきたら「ああ小さい頃のことだ」という認識はなく、その時の視点で状況を把握する。自分が体験したことは過去のことだったとは目が醒めてから気づく。
今では二児の母になった妹が専門学校生ぐらいで、「HAKKAのビルに行きたい」と言ったので行ってみたら日曜の夕方だから閉まっていて、高校生ぐらいの弟が「梅花堂」というところの和菓子を「好きだから」という理由で買って後から合流した。その街は仙台と渋谷を足して割ったような感じで、HAKKAのビルも梅花堂も実在しない。
現実もこういう風になればいいと思う。いつでも昔に戻れて、なにか失われたものを埋めてすっきりする事ができればいい。私は、私になついてくる弟を蔑ろに扱っていたという後悔があって、その後悔はどうやったってもう埋めきれない。大人になった弟にいくら何を買い与えても、子供のころに求められたようなものを彼にはもう与えられない。
だから、目が醒めているときは、できるだけ何かを失わないように気をつけていかなければならない。でもまあ、もし取りこぼしてしまったら、また夢で会えばいいのかも。